研究室へ向かう友人が、今日は船に乗ってウニを採りに行く。別の友人は、森で採ってきたキノコの土を洗っている。沖縄での短期実習には、普段の大学生活とは少し違う研究の風景がありました。
慶應義塾大学医学部2年のN.M.さんが訪れたのは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)。キャンパスツアーやTAの方から聞いた話、そして実際に滞在して気づいたことを寄せてくれました。
美しい建物や研究設備に加えて印象に残ったのは、そこで研究する人たちの暮らし。N.M.さんの言葉をたどりながら、OISTでの日々を紹介します。
この記事の目次
森の中に広がる、研究のためのキャンパス
N.M.さんがまず驚いたのは、建物の美しさと研究設備の充実ぶりでした。窓の多さ、鮮やかな壁の色、空間のつくり方。建築の随所にこだわりを感じたといいます。
研究設備についても、普段学ぶ環境と比べて、その数や規模の大きさが印象に残りました。

キャンパスは丘の上の森に広がり、建物同士を橋が結んでいます。N.M.さんは、木々を傷つけないように建物をつなぐ工夫についても説明を受け、「森と一体化したキャンパス」と表現しています。
研究する場所そのものが、沖縄の自然と隣り合っている。そのことは、建物の外観だけでなく、そこで交わされる日常の会話からも伝わってきました。
海へ、森へ。沖縄の自然が研究の現場になる
今回の実習では、学生たちはそれぞれ異なる研究ユニットに配属されました。N.M.さんの印象に残ったのは、海洋生物や自然に関わる研究の身近さです。
海洋生物を扱うユニットの友人は、「これからウニ取るために船乗ってくる」。菌の研究をしている友人は、「下のジャングルに行ってキノコ取ってきたからこれから土洗わなきゃ」。そんな話をしていたそうです。
実験に使うものを、近くの海や森へ採りに行く。N.M.さんは友人たちの様子から、沖縄という立地を生かした研究が行われていることを実感しました。
それぞれの配属先についての話を通じて、研究の現場がキャンパスの外にも広がっていることが見えてきます。
分野の壁を越えて、研究から起業まで
OISTの仕組みで印象に残ったことの一つが、「学部がない」という点でした。研究は「ユニット」という単位で行われ、学部の境界にとらわれず、分野を横断して進められるようにしていると教わったそうです。
公式の案内でも、OISTは学部を設けず、教員が独立した研究ユニットを持つ体制を紹介しています。専門分野ごとの区切りとは違う研究の組み立て方に触れる機会となりました。OIST公式:学際性と研究ユニットについて ↗
また、N.M.さんは起業支援についても説明を受けました。博士課程での研究と並行して起業したい学生や、事業につながりそうなアイデアを持つ学生を支える制度があるという話です。
分野を越えて研究すること、その先に事業として形にする道もあること。研究の内容に加え、研究をどう進め、どう社会につなげるかという仕組みにも触れた滞在でした。
研究を続ける人の、暮らしも支える
研究設備と同じように、N.M.さんの目を引いたのが、キャンパス内に保育園があることでした。
博士課程の期間が、出産や育児の時期と重なる人もいる。そのため、子育てをしながら研究を続けられるように支援が整えられていると聞いたそうです。細かな条件までは覚えていないとしつつ、経済面も含めた支援の手厚さが印象に残ったといいます。
大学で過ごす日々は、食事の時間にも表れます。N.M.さんは朝食をキャンパス内のベーカリーカフェで、昼食をカフェテリアで取っていました。
滞在中の昼食は日替わりで、和食と洋食の比率はおよそ1対2という印象だったそうです。メニューが変わっても、毎日ヴィーガンの選択肢が用意されていたことも記憶に残っています。
保育園、カフェ、食堂。研究する人の一日を支える場所にも、N.M.さんの視線は向いていました。
英語でつながる日常と、沖縄文化との出会い
英語を共通言語とし、海外から多くの学生や教員が集まるOIST。N.M.さんは訪問前、日本のアニメや文化が好きで来た人が多いのではないかと想像していました。
ところが、実際に出会った人たちの印象は少し違ったそうです。「日本が好きだから」という人ばかりではなく、むしろ海が好きという人が多かったと振り返っています。
もちろん、これは短い滞在の中でN.M.さんが接した人たちについての実感です。それでも、同じ場所を選ぶ理由にはいろいろなものがあることに気づく、身近な発見でした。

その一方で、キャンパスには沖縄の文化に触れる機会もありました。エイサーや三線のサークルがあり、N.M.さんは子どもたちによるエイサーの発表会を見学しました。
衣装も太鼓も本格的で、演技の上手さに感心したといいます。そして、見ている自分自身の学びにもつながりました。
自分も日本文化についてもっと勉強しなければと思わされました。
国際的な研究環境の中で、沖縄の文化に出会い、自分の知っている日本を見つめ直す。研究室の外にも、実習を通じた学びがありました。
いつもの大学を離れると、見えてくるもの
N.M.さんの感想には、研究成果や専門的な手法だけでなく、建築、育児支援、食事、サークルといった話題が並んでいます。実際に滞在したからこそ目に入った、大学の日常です。
海や森へ向かう友人の話。学部の区切りを越える研究の仕組み。子育てをしながら研究する人への支援。そして、子どもたちが踊るエイサー。
医学部で学びながら、いつもと違う環境に身を置いてみる。そこには、何を研究するかに加えて、どんな場所で、どんな暮らしをしながら学ぶかを考えるきっかけがあります。
沖縄の森で過ごしたN.M.さんの短期実習は、研究と暮らしが同じキャンパスの中でつながる姿を伝えてくれました。
この記事は、慶應義塾大学医学部2年・N.M.さんから寄せられた感想をもとに構成しています。体験や会話、キャンパス内の様子は実習当時のものとして紹介しています。OISTの基本情報は公式サイトで確認しました。写真提供:N.M.さん。
2026年9月20日公開。支援制度の対象・条件などの最新情報は、OISTの公式案内をご確認ください。
